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東京慈恵医科大学同窓会

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2017年03月25日 大学講座シリーズ? 「外科学講座 呼吸器外科」
分野担当教授 森川 利昭


沿革
 外科学講座は学祖高木兼寛から始まる。平成13年(2001年)4月に、それまでの第一外科、第二外科、青戸病院外科を統合して大講座制に移行し、消化器と非消化器の二分野体制となった。平成17年7月に、非消化器が呼吸器、乳腺・内分泌および血管、小児の2分野に分かれ、消化器と合わせて3分野体制が確立した。呼吸器、乳腺・内分泌分野担当教授として北海道大学から森川利昭が着任した。
 附属病院呼吸器外科診療部は平成13年に発足し、秋葉直志講師(当時)が初代診療部長に就任した。平成17年7月からは森川が第二代診療部長に就任した。
テーマ    
 高齢化社会を背景に、最高度の医療レベルであらゆる病気の「病人を診る」都心の格式ある大学病院には、先進の外科手術が適切である。専門とする体に優しい手術、独自に開発した各種手術機器を用いた最新の完全胸腔鏡下手術を導入し、「胸腔鏡手術のトップランナーたれ」をテーマに掲げた。
臨床    
 胸腔鏡手術は従来は自然気胸の手術など比較的小さい手術が適応とされ、全呼吸器外科手術の約半数程度が対象であった。これを肺癌に対する根治手術などの大きな手術に拡大し、全手術の90%以上を「完全」胸腔鏡下に施行するに至った。手術の安全性は高く、出血量は少なく、早期の退院が可能となったうえ、術後の患者のQOLは高まった。手術成績は安定し、肺癌の生存率も全国平均に勝るとも劣らない。難度の高い手術の多い大学病院において、胸腔鏡手術の内容は世界的にも突出している。低侵襲手術であるため、高齢者のみならず合併疾患を有するハイリスクの患者に対しても安全な手術であることが証明された。また附属四病院は有機的に協力し随時交流を重ね、手術件数は増加している。各施設で患者にとって最適な手術の選択と、手術の改良を続けている。
研究    
 胸腔鏡手術手技・器具の改良を重ね、より安全・安心で確実な手術の開発を推進してきた。手術アプローチとして多孔式から2孔式、さらに単孔式手術まで最も適切で低侵襲な手技を開発している。一方手術のシミュレーションや手術機器の開発のプラットフォームとして3Dプリンターを応用した胸腔モデルの開発を進めてきた。我々が独自に開発した実体胸腔モデルは、人体と等サイズであるうえ、形状に加えて肺などの臓器の質感をも再現し、そっくりの生体環境を再現している。さらに電気メスなどの手術機器を実際の手術と同様に使用できる画期的なものである。現在標準的に行われている動物による手術シミュレーションに代わるものとして国内外で注目され、2015年度グッドデザイン賞を受賞した。本モデルを用い、手術・手術機器の改良に関する研究、手術トレーニングの研究を進めている。最近新しく、Synchronized Su-
rgical Simulation(SSS)法を開発した。これは実体胸腔モデルを手術室内に持ち込み、熟練医師による実際の手術のすぐ傍で、同期させて手術シミュレーションを行うものである。トレイニーは実際と全く同じ手術手技と共に、実際の手術の緊張感も同時に学ぶことができる。これからの手術教育の新しい画期的な方法として注目されている。このほか学会主導の様々な研究には積極的に参加している。
教育   
 臨床教育は屋根瓦方式が基本である。胸腔鏡手術はモニター画像を通して行われるため、術者の視野を全員で共有することができる。この手術教育に極めて適した環境を活かして、実地の教育を進めてきた。さらに胸腔鏡手術を呼吸器外科手術の標準とするために、学内外、国内外で積極的にセミナーやライブ手術を行ってきた。今後は実体胸腔モデルを用いた手術教育を展開する予定である。がん専門病院に若手医師を積極的に派遣し、標準的ながん臨床を維持発展させている。
総括    
 同窓からの患者様紹介に良好な治療成績で応えるとともに、独創的で先駆的なアイディアを実現することにより、呼吸器外科の近未来像を追及している。
【大木隆生統括責任者の一言】
 故・伊坪喜八郎教授を源流とする肺外科は低侵襲手術のパイオニア・第一人者である森川教授を迎えてアジアのトップ施設としての地位を確たるものとし、全ての分院、関連病院で安心してご紹介頂ける高いレベルの低侵襲治療を誇っている。また、診療科の雰囲気は明るく、スタッフの士気も高く、先駆的精神を旨としている看板診療科である。また外科学講座運営における森川教授のご尽力に統括責任者として深く感謝している。

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