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東京慈恵医科大学同窓会

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2018年02月25日 退任記念講義を終えて 細菌学講座 水之江 義充
演題「基礎と臨床の架け橋を目指して」


 私は、昭和53年に鳥取大学医学部を卒業し、九州大学泌尿器科に入局しました。学生時代は医学部サッカー部に所属していました。九大泌尿器科では尿路感染症研究グループに所属し、尿路分離菌の薬剤耐性の変遷などを調査していました。6年間の臨床経験を積んだ後、昭和59年に九州大学大学院博士課程(細菌学)に入学し、細菌線毛の遺伝子群のクローニングとその解析を行いました。学位取得後、泌尿器科に戻りましたが、2年間休職し平成3年からスウェーデン・ウメオ大学(微生物学教室)に留学しました。留学2年目に大腸菌の新溶血素を発見しました。この毒素に関する研究は、後にCellに掲載されました。スウェーデンの教授からは残って研究を続けるように強く勧められましたが、当時41歳となり、外国に長く残ることに不安を覚え発見した遺伝子をスウェーデンに残し断腸の思いで帰国し、泌尿器科助手に復職しました。しかし、基礎研究への思いが断ち切れず、平成8年(43歳のとき)九州大学医学部細菌学教室に助手として移りました。平成11年准教授となり、平成19年6月、慈恵医大細菌学講座教授にお招き頂きました。
 私は九州大学では大腸菌、コレラ菌、カンピロバクター、レジオネラなどのグラム陰性桿菌を用いて研究をしました。慈恵医大細菌学講座では、教室員全員がグラム陽性菌であるブドウ球菌の研究を行っていました。数ヶ月の熟慮の結果、MRSAなど院内感染症原因菌として重要なブドウ球菌のバイオフィルムについて研究をすることに決めました。基礎・臨床の先生方とチームを組んでバイオフィルム研究を推進する目的で、バイオフィルム研究センターを設置していただきました。素晴らしい研究環境を与えていただいた大学、細菌学教室の同門会、教室員の協力に感謝申し上げます。最後になりますが、慈恵医大の益々の発展を祈念いたします。

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