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東京慈恵医科大学同窓会

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2023年11月25日 佐藤峻君(平21)日本病理学会総会において学術奨励賞受賞

 病理学講座講師の佐藤峻君が、令和5年4月13日〜15日に開催された第112回日本病理学会総会において学術奨励賞を受賞した。日本病理学会は言わずと知れた、本邦における病理学分野の研究、診療及び学術振興の中心をなす組織である。学術奨励賞は病理学領域における研究と診断の中で特に優れた学術的貢献を行った若手研究者に対して与えられ、登竜門的な位置づけを有する。
 今回の受賞演題は「日本人前立腺癌における病理学的予後因子の網羅的検討―低侵襲治療の適応拡大に向けて」である。欧米諸国において導入された低リスク前立腺癌に対する監視療法は、本邦においても主たる治療法の一つとして認識されつつあり、近年では中間リスク群へと適応が拡大されつつある。しかしながら、中間リスク群における監視療法の適応基準は十分に定まっているとは言えない状況である。今回の研究では、中間リスク前立腺癌において、※Gleasonパターン4の割合が独立した予後予測因子であることが明らかとなり、監視療法を含む低侵襲治療の適応決定において、有力な指標となりうることが示された。研究成果はAmer-ican Journal of Surgical Patholo-gy誌などに五編の原著論文として掲載され、その一部は国際泌尿器病理学会(Internationa-l Society of Urol-ogical Pathology)のコンセンサス・ペーパーに引用された。
 佐藤君は入局以来、泌尿器・男性生殖器腫瘍に対し、主として外科病理学的アプローチで精力的に研究を行ってきた。国内外の学会発表、論文執筆による研究成果の発信にも熱心に取り組んでおり、臨床・研究の両面で若手医局員をリードする存在である。今回の受賞を機に、さらなる研究成果の発展と実臨床への応用、並びに佐藤君の更なる飛躍を大いに期待したい。
(病理学講座担当教授下田将之(特平12)・教授 鷹橋浩幸(昭63)記)

※Gleasonパターン4Gleas-on分類は前立腺癌の組織学的悪性度分類であり、分類の提唱当時は腫瘍を組織像によりパターン1―5の5段階に分類し、腫瘍全体に占める割合が最も多い第1パターンと次に多い第2パターンの和によりGle-asonスコアを算出した(数字が大きいパターンほど悪性度が高い)。ただし、現代の運用ではパターン1、2はほぼ存在せず、パターン3―5のいずれかを付与される。

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