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東京慈恵医科大学同窓会

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2024年02月25日 同窓会振興資金による海外派遣報告
呼吸器内科 大学院 松林沙知(平26)


 令和5年9月、イタリア・ミラノで開催されたEuropean Respiratory Society Con-gress: ERS2023(欧州呼吸器学会二〇二三)に参加し、“A novel senotherapeutic approach for CO-PD via activati-ng autophagy-lysosome axis”という演題名で口頭発表した。
 COPDはタバコ煙などの長期吸入で起こる閉塞性肺疾患であるが、現時点で分子病態に迫る有効な治療法は明らかではない。加齢と共に病態が進行する老化関連呼吸器疾患であり、これまで我々は、不十分なオートファジー活性による細胞老化亢進がCOPDの病態進展に関与することを報告してきた。
 今回、我々はオートファジー・リソソーム系制御の中心的調節因子であるTFEB(転写因子EB)発現を誘導しうるペマフィブラートに着目した。気道上皮細胞においてペマフィブラートの投与はTFEBの発現を増加させ、オートファジーを誘導し、喫煙刺激誘導性細胞老化を抑制した。また喫煙曝露マウスでも、ペマフィブラート投与群ではCOPD病態を反映する肺胞径拡大や閉塞性換気障害、細胞老化がいずれも抑制されており、新たな治療薬となる可能性を明らかにした。日本呼吸器学会で優秀演題賞をいただいた内容をさらに発展させて発表したが、海外においても、多くの参加者に興味を持っていただき、今後につながる貴重な経験ができた。
 最後になりますが、ご指導いただいた荒屋潤教授、伊藤三郎講師をはじめ指導医の先生方、また海外派遣にご支援いただいた同窓会に厚く御礼申し上げます。

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