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東京慈恵医科大学同窓会

最新情報


2016年10月25日 肥満症に対する本学初の
「減量外科手術」行われる


 附属病院において導入された減量外科手術の第一例目が平成28年8月16日に行われた。当院内科で、糖尿病をはじめとした多くの肥満関連疾患を持つ患者さん(40歳代の女性、体重-10?)が手術を希望された。約2か月の準備期間を経て滞りなく手術が施行され、無事に退院された。
 本患者さんの手術治療導入への最終確認は、外科医、麻酔科医、ICU、看護師、薬剤師、栄養士等で構成されるチームカンファレンスにおいて行われた。手術は、我が国の腹腔鏡下減量外科手術におけるパイオニアである笠間和典先生の御指導のもと、消化管外科で減量外科専任の渡部篤史医師が執刀した。大木隆生教授、矢永勝彦教授、三森教雄教授らをはじめ、多数の外科スタッフはもちろんのこと、関連内科医師、栄養士が立ち合い、激励・助言が加わるというプレッシャーの中、手術時間2時間20分、出血少量で滞りなく終了した。
 術後は呼吸器合併症や肺塞栓などの重篤な合併症を防ぐために、徹底的なERAS(Enhanced Recovery After Surgery)が遵守された。術後3時間には離床を行い、翌日から経口摂取を開始、術後4日目で合併症なく退院した。退院時には、ほぼ全ての内服薬を中止することができ、退院後の外来でも糖尿病など多くの肥満関連疾患に関するデータは正常範囲内で維持されていた。体重減少効果が表れる前に各種の肥満関連疾患が改善するという点で、関わった内科医師も効果出現の速さに驚いていた。
 減量外科治療は臨床的な有効性は確認されているが、メカニズムに関しては未解明な点が多い。しかし無事退院を迎えた患者さんは、手術をきっかけに新たな人生のスタートをきれたことを大変満足していた。順調に減量がすすむと、一年後の推定体重は約70?で、多くの肥満関連疾患から解放されることが予想される。また、これまで問題となっていた肥満外科手術の診療報酬の低さについても、平成28年4月の改定で手術材料の加算が適正化され、今後の保険診療の普及が期待されている。
 減量外科治療はこれまで自己流ダイエットでリバウンドを繰り返し、肥満関連疾患に苦しんでいながらも、なかばあきらめていた「肥満難民」に対する福音と位置付けられる。本学附属病院での第一例目がきわめて順調に経過したこともあり、今後関係各部門のチームワークの整備が進むことが期待される。
(消化管外科 矢野文章記)

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