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東京慈恵医科大学同窓会

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2016年11月25日 シンポジウム1
オリンピックにおける公衆衛生:
病院は何に備えるべきか
相馬中央病院 内科診療科長
越智 小枝


 4年後の東京オリンピックへ向け、医療機関では様々な対策が必要である。オリンピック時の健康被害には、たとえば将棋倒しのような大規模事故がある。持ち込み感染症だけでなく、結核など日本から持ち出され得る感染症、食中毒などの対策も必要である。さらに、各種イベントでは解放的な気分により違法ドラッグや性感染症が増えるという報告もある。テロなどの人災対策においては、大きな病院が準備するだけでなく、現場直近の病院が速やかに対処できること、大量の死傷者を効率よく搬送する方法も大切となる。
 特に災害大国日本では自然災害への準備は必須である。海外の方がパニックを起こす、逆に危険個所に見物に出かける、などの行動を取ることにより、予測外の規模の被災者が出る可能性もあるからである。熱波対策も、熱中症対策にとどまらない。気温が上昇すると突然死や脳血管疾患、感染症、集中力低下による交通事故や競技者の事故などが増加することが知られており、包括的な視野に立った災害対策が必要である。
 ロンドンオリンピックにおいては大会中の医療ニーズが5%増と試算された。医療が飽和した現在の東京において日常診療を犠牲にすることなくオリンピックを開催する為には、平時の医療システムを効率化する、予防医学を強化するなどが必要である。このように平時にも益となる活動とつなげることで、オリンピックの準備は開催国を健康にするHealth legacyの機会となり得るのである。

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