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東京慈恵医科大学同窓会

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2016年11月25日 シンポジウム4
医療の国際化に伴う
国内医療機関の課題と対応について
聖路加国際大学 臨床疫学センター教授
遠藤 弘良


 筆者らは厚生労働省の研究費補助を受けて2010年より6年間にわたり日本の医療機関における外国人患者の受入れの実態調査や国内外の国際医療交流をめぐる様々な課題の調査・検討を行った。そのきっかけは2010年に民主党政権下で策定された「新成長戦略」の中で、外国人患者の受入れ推進の方向性が示されたことによる。
 外国人患者の受入れ実態については2010年と2013年に全国の病院に対し調査を実施した。2010年に比較して2013年の調査では受入れが増加し、日本に住んでいる外国人患者の受入れ実績がある病院は、入院75%、外来89%と高い結果が出た。また、医療を目的として来日した外国人患者の受入れ実績がある病院は、入院12%、外来15%であった。
 課題としては、医療通訳、医療費、外国人患者の多様な国民性や考え方の違いへの対応の難しさ、医事紛争等が挙げられ、これらの政府に対する要望も挙げられた。これに対し政府においても医療通訳に関する事業等の諸施策を展開している。
 2012年に自民党新政権は「アベノミクス」の一環である「国際展開戦略」の中で、日本の医療技術や医療関連製品、医療機関、医療サービスや医療インフラなどを海外に売り込む方針「国際医療展開」を示した。一方、近年の訪日外国人は急激に増加しており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催によるさらなる増加が予想される。
 歴史と優れた診療実績を誇る慈恵医大が日本のグローバリゼーションのための社会インフラとしての一翼を担うため、外国人患者が安心して診療を受けられる体制をトップ主導で整えてゆかれることに期待したい。

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